ここに集めた写真のほとんどは1998年から2004年の間に撮影したものです。168点の内、2002年11月に出版した作品集『わび』の第三章「現代の章」に11点、2007年に出版した『感性のバケモノになりたい』に「翳」として3点発表しています。

 当時は何処へ行くにもローライフレックスを携行していました。これらの写真は 共通のテーマに基いて撮影したわけでもなく、表現に対する強い意図があったわけでもありません。なんとなく気になった風景にフォーカスを合わせシャッターを切ったのです。何故気になったのかは、さまざまな経験が重層的に重なっているようで明確に言えません。動機が無自覚だったとしても、撮った写真はやはり私自身の総体です。ただ、目の前に在る見えた世界の決定的瞬間を捉えて完結しようとしたのでなく、展開してる風景をきっかけにして、想像の自由や未知の世界への入口を拡げるために撮ったのです。

 表題を「或るもの」としたのは、日常の何処にでもある被写体の漠然としたものに惹かれたと思ったからです。曖昧なものを前にして、撮ることで共鳴する部分を見つけたかった。撮影したのは10年以上前ですが、ローライフレックスを持って 街を歩けば、現在もこのような光景を記録すると思います。

十文字美信

会期:2015年12月14日(月)〜 2016年2月29日(月)

top back