花は盛りが美しい。
 ずっとそう思ってきた。
 生命力に溢れ、みずみずしい色彩に溢れた花は、近づけば芳しい香りも漂ってくる。花を観賞することの大きな理由は、若々しい花の美しさだ。花が枯れ始め、颯爽とした勢いも失われてくると、大抵は、注意深く見つめることもなく捨ててしまう。

 妻が花器に活けた花を、時が経過しても触らずに、そっとそのままにして見ていると、日々少しずつ変化していくのがわかる。色も褪せ、活けた花の形は、注意していないとわからないくらい微妙に動いていく。花は自らの重みに耐えかねるように徐々に下を向き、なんとも言えない形に落ち着く。花びらを一枚一枚落としていくものもあれば、中には力尽きたように、ポ卜リと音を立てて花そのものを落としてしまう。
枯れていくすべての過程は完壁なように思われる。
 地球の引力や重力と折り合いをつけながら、生命力と環境との微妙なバランスの答えがここにある。そのうえ、時間の経過によって現れる自に見えない微生物までも力を合わせて形や色彩を決めていく。

 枯れつつある花の写真に「神殿」と名付けた。作品のタイトルに相応しいかわからない。昔の人が山を見て、人の力を超えた存在を感じたように、枯れていく花の内側にも、不思議な力の源が潜んでいるように感じられたのだ。(『常ならむ』より)

花 制作:十文字真理子

会期:2017年4月28日(木)〜 6月26日(月)
十文字美信 写真『常ならむ』ワーキングプリント展

会期:2016年4月28日(木)〜 5月30日(木)
十文字美信写真展「オリジナルプリント」 1971年〜2016年 第一期・第二期

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